令和5年度改正税法 マンションの相続税評価の見直し

1.相続税の評価方法

 相続税法では、相続等により取得した財産の価額は、国税庁の「財産評価基本通達」(以下、評価通達)において、その財産の取得時における時価によるもの(時価主義)とされています。

 そして、マンション(一室)の相続税評価額(自用の場合)の算出方法は、以下のとおりとされています。

「区分所有建物の価額(①)+ 敷地(敷地権)の価額(②)」

 ① 区分所有建物の価額
   =建物の固定資産税評価額(注1)✕1.0
 ② 敷地(敷地権)の価額
   =敷地全体の価額(注2)✕共有持分(敷地権割合)

 (注1)1棟の建物全体の評価額を専有面積の割合で接分し各戸の評価額を算定
 (注2)路線価方式又は倍率方式で評価

2.マンション節税と国税当局の対応

 相続税の計算は上記の取扱いにより、預金、株式、現金等は時価のままですが、家やマンションの相続税評価額は時価に比べかなり低くなります。

したがって、現金よりもマンションを相続した方が時価 (市場価格)と相続税評価額の開きが大きく節税効果も大きくなります。特にタワーマンションの場合、容積率を上限近くまで活用することなどから市場価格は高額のままで売買される反面、室数が多いため相続税評価額がさらに大幅に下がることがあります。この乖離が大きいことから、行き過ぎた節税対策として問題視されてきました。

 一方で、市場価格と相続税評価額が大きく乖離ているケースでは、相続税申告後に国税当局から、相続税評価額ではなく鑑定価格等による時価で評価し直して課税処分をされ、訴訟に至るケースも発生しています。これは、評価通達に沿って評価すると著しく不適当と認められる場合に限り国税庁長官の指示を受けて評価する、「評価通達6項(この通達の定めにより難い場合の評価)」を適用して行っていますが、昨年4月の最高裁判決では、評価通達によらない評価は合理的な理由がない限り平等原則に反すると指摘があり、マンションの市場価格と相続税評価額の乖離は、予見可能性の観点からも評価方法の見直しにより是正することが急務とされています。

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令和5年3月改訂
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