所得税

 

改 正 の 概 要

・子育て支援に関する政策税制として、住宅ローン控除及び既存住宅のリフォームに係る特例措置が拡充されました。
・また、既存住宅のリフォームに係る特例措置について、適用対象者の合計所得金額要件の見直し等が講じられた上で2年延長されました。

(1)住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の見直し
①子育て特例対象個人(年齢40歳未満であって配偶者を有する者、年齢40歳以上であって年齢40歳未満の配偶者を有する者又は年齢19歳未満の扶養親族を有する者)が、認定住宅等の新築若しくは認定住宅等で建築後使用されたことのないものの取得又は買取再販認定住宅等の取得をして、令和6年1月1日から令和6年12月31日までの間に居住の用に供した場合の住宅借入金等の年末残高の限度額(借入限度額)を次のとおりとして住宅ローン控除の適用ができることとされました。

住宅の区分 借入限度額
認定住宅 5,000万円
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円

②認定住宅・ZEH 水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅の新築又はこれらの住宅等で建築後使用されたことのないものの取得に係る床面積要件の緩和措置(合計所得金額1,000万円以下の者について令和5年12月31日以前の建築確認分の住宅の床面積要件が50m”から40mに緩和されている措置)について、令和6年12月31日以前に建築確認を受けた家屋についても適用できることとされました。

 

(2) 既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除の見直し

①適用期限を令和7年12月31日までとした上で、子育て特例対象個人が、その者の所有する居住用の家屋について一定の子育て対応改修工事をして、その居住用の家屋を令和6年4月1日から令和6年12月31日までの間に居住の用に供した場合を適用対象に追加し、その子育て対応改修工事に係る標準的な工事費用相当額(250万円を限度)の10%に相当する金額がその年分の所得税の額から控除されることとされました。

②また、適用対象者の合計所得金額要件が2,000万円以下(改正前:3,000万円以下)に引き下げられました。

▶特定の改修工事等をして、令和6年1月1日以後に自己の居住の用に供する場合について適用

③さらに、工事の対象設備となるエアコンディショナーの省エネルギー基準達成率が107%以上(改正前:114%以上)に引き下げられました。

(注)「一定の子育て対応改修工事」とは、
(イ)住宅内における子どもの事故を防止するための工事、
(口)対面式キッチンへの交換工事、
(ハ)開口部の防犯性を高める工事、
(ニ)収納設備を増設する工事、
(ホ)開口部・界壁・床の防音性を高める工事、
(ヘ)間取り変更工事(一定のものに限る。)

であって、その工事に係る標準的な工事費用相当額(補助金等の交付がある場合には、その補助金等の額を控除した後の金額)が50万円を超えること等一定の要件を満たすものをいいます。

1.所得税・個人住民税の定額減税

改 正 の 概 要

・デフレに後戻りさせないための措置の一環として、
 令和6年分の所得税・令和6年度分の個人住民税の定額減税が実施されます。

・具体的には、納税者(高額所得者は対象外)及び配信者を含めた扶養家族1人につき、
 令和6年分の所得税から3万円、
 令和6年度分の個人住民税の所得割から1万円の特別控除を行い、
 令和6年6月以降の源泉徴収・特別徴収等から実施されます。

  所得税 個人住民税
対象者 令和6年分の所得税に係る合計所得金額が、 令和6年度分の個人住民税に係る合計所得金額が、
1,805万円(給与収入のみの場合、給与収入2,000万円)以下である場合に限られます。
特別控除額

特別控除額は①②の合計額
(その合計額がその者の所得税額を超える場合には、所得税額が限度。)
①納税者本人  3万円
②同一生計配偶者又は扶養親族(居住者に限る)
 1人につき3万円

 

特別控除額は①②の合計額
(その合計額がその者の所得割の額を超える場合には、所得割の額が限度。)
①納税者本人 1万円
②控除対象配偶者又は扶養親族(国外居住者を除く)
 1人につき1万円

(注)控除対象配偶者を除く同一生計配偶者(国外居住者を除く。)については、令和7年度分の所得割の額から、1万円を控除。
給与所得者に係る特別控除


①令和6年6月1日以後最初に支払を受ける給与等(賞与を含むものとし、給与所得者の扶養控除等申告書の提出の際に経由した給与等の支払者が支払うものに限る。)につき源泉徴収をされるべき所得税の額から特別控除額(特別控除前の源泉徴収税額が限度。)を控除。

②①により控除しきれない部分の金額は、以後令和6年中に支払われる給与等
(令和6年の最後に支払われるものを除く。)に係る控除前の源泉徴収税額から、順次控除。

③令和6年分の年末調整の際に、年税額から特別控除の額を控除。


①特別徴収義務者は、令和6年6月に給与の支払をする際は特別徴収を行わず、特別控除の額を控除した後の個人住民税の額の11分の1の額を令和6年7月から令和7年5月まで、それぞれの給与の支払をする際毎月徴収。

②地方公共団体は、令和6年度分の給与所得に係る個人住民税の特別徴収税額
通知(納税義務者用)に控除した額等を記載。

③特別徴収義務者は、令和6年分の給与支払報告書の摘要の欄に所得税額から控除した額等を記載。

 

1.制度の概要

優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の課税の特例は優良な住宅地の造成に向けた事業のため地方公共団体などに土地等を譲渡した場合、長期譲渡所得(2,000万円以下の部分)について、税率を以下のように軽減するものです。

  所得税 個人住民税 合計
本則 15% 5% 20%
特例 10% 4% 14%
減税部分 5% 1% 6%
※復興特別所得税は含まず

なお、特例の適用を受ける場合は、特例の適用を受けるための確定申告書に開発業者から受け取った添付書類が必要です。

2.改正の内容

良好な環境を備えた住宅・宅地開発等の事業を促進するため、次の見直しを行った上、その適用期限が延長されました。

(1) 適用対象から特定の民間再開発事業の用に供するための土地等の譲渡が除外されました。

(2) 開発許可を受けて住宅建設の用に供される一団の宅地の造成を行う者に対する土地等の譲渡に係る開発許可について、次の区域内で行われる開発行為に係るものに、限定されました。

  • 市街化区域
  • 市街化調整区域
  • 区域区分に関する都市計画が定められていない都市計画区域(用途地域が定められている区域に限ります。)

(3) 適用期限が令和7年12月31日まで3年延長されました。

3.適用期日

令和5年1月1日以後に行う土地等の譲渡について適用されます。

 

 

1.制度の概要

空き家の発生を抑制するための特例措置は、相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに相続または遺贈により取得した
被相続人居住人家屋※ または
被相続人居住用家屋の敷地等(耐震性のない場合は耐震リフォームをしたものに限り、その敷地を含みます)または
取得後の土地を譲渡した場合には居住用財産を譲渡したとみなし、
家屋または土地の譲渡所得金額から最高3,000万円まで控除できるもので、平成28年度税制改正において創設されました。
 
 ※被相続人居住家屋とは、
相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で、
①昭和56年5月31日以前に建築されたこと
②区分所有建物登記がされている建物でないこと
③相続開始直前に被相続人がひとりで住んでいたこと
の3つの要件に該当するものです。

 創設後、平成31年度改正により被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、かつ、相続の開始の直前まで老人ホーム等に入所をしていた場合も適用が認められます。

 適用を受けるためには、相続開始の直前において被相続人が家屋を居住の用に供し、かつその家屋にその被相続人以外に居住をしていた者がいなかったことなどを明らかにする自治体の「被相続人居住用家屋等確認書」が必要です。

2.改正の内容

 利用が予定されていない空き家の数が令和12年度には約470万戸まで増える可能性があると指摘されており、適切な管理が行われていない空き家は防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼすことから、空き家の除去や空き家の発生を抑制するため見直しが行われました。

(1)適用要件の緩和

 これまで、譲渡までに耐震基準に適合するか、被相続人居住用家屋の取壊し等が適用要件となっていましたが、売買契約等に基づき買い主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修又は除却の工事を行った場合、工事の実施が譲渡後であっても適用対象とされました。


国土交通省資料より

(2)相続人数による特別控除額の見直し

 相続または遺贈による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした相続人数が3人以上である場合の特別控除額が2,000万円(改正前3,000万円)とされました。

(3)適用期限の延長

 適用期限が4年間延長され、令和9年12月31日までとされました。

3.適用時期

 令和6年1月1日以後に行う被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等の譲渡について適用されます。

1.制度の概要

NISA(非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置)とは
「Nippon Individual Savings Account」の略称で、英国の個人貯蓄口座(ISA)をモデルにした「日本版ISA」です。
本来は、株式や投資信託など金融商品への投資から得られる配当・分配金や売却益には約20%の税金がかかりますが、NISAは個人の資産運用を後押しするために作られた税制の優遇制度で、購入した株式や投資信託などの売却益や配当金が一定の範囲内で非課税となります。

 令和5年までのNISAには3つの種類があり、どれか1つを選択

①一般NISA

毎年120万円の非課税投資枠が設定され、上場株式・ETF・REITなど株式・投資信託等の配当・譲渡益が非課税対象で、非課税保有期間は5年間
投資期限は令和10年までとされています。

②つみたてNISA 毎年40万円の非課税枠が設定され、長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託に投資が可能で、非課税保有期間は20年間
投資期限は令和24年までとされています。
③ジュニアNISA 未成年者を対象とした少額投資非課税制度で、2親等以内の親族が運用管理者となります。毎年80万円の非課税投資枠が設定され、株式・投資信託等の配当・譲渡益が非課税対象。
投資可能期間は今年で終了します。

2.新NISA  改正の内容(令和6年以降)

(1)「一般NISA→『成長投資枠』」と 「つみたてNISA→『つみたて投資枠』」の併用が可能に
 現行では、上場株式の投資が可能な「一般NISA」と一定の投資信託を対象とする「つみたてNISA」の2種類から、どちらかを選択しなければなりません。
 新NISAでは、一般NISAを「成長投資枠」に、つみたてNISAを「つみたて投資枠」に名称変更するとともに、両投資枠の併用が可能となりました。

(2)非課税保有期間を無期限・恒久的措置に
 若年期から高齢期に至るまで継続的な資産形成を行えるよう非課税保有期間を無期限に、口座開設可能期間も期限を設けない恒久的措置となり、これまでのロールオーバーなどの面倒な手続きがなくなります。

(3)年間投資上限額が最大360万円に
 現行の一般NISAが120万円、つみたてNISAが40万円となっている年間投資上限額について、成長投資枠は2倍の240万円に、つみたて投資枠は3倍の120万円とし、両枠を併用することにより最大で年間360万円までの投資が可能となります。

(4)生涯非課税限度額 最大1,800万円
 新たに「一生涯の非課税限度額」が設けられ、非課税保有限度額が買付金額ベースで合計1,800万円に設定され、このうち成長投資枠は1,200万円までとされています。

(5)現行NISAの対応
 現行NISA及びつみたてNISAについては、今月末で買付が終了となりますが、非課税口座内にある商品については、新しい制度における非課税限度額の枠外で、現行の取扱いが継続されます。

(6)ジュニアNISAの手続きの省略
 ジュニアNISAも今年末で新規買付が終了します。
今年末までにジュニアNISAで投資した商品は、5年間の非課税期間終了後も、一定の手続きを経ることで18歳になるまでは非課税措置を受けられることとなっていますが、利用者利便を考慮してその手続きを省略できることとされました。


3.適用時期

令和6年1月1日から適用されます。

 

⚫ 地域経済がエネルギー価格や原材料費の高騰等の厳しい経済状況に直面する中、引き続き、高い付加価値を生み出す設備投資を促進する観点から、適用期限を2年間延長する。
⚫ 地域の「稼ぐ力」を強化すべく、特に高い付加価値(3億円以上)を創出し、地域内企業との取引や雇用を通じて、より一層地域経済に波及効果を及ぼす事業について上乗せ支援の対象とする。

1.制度の概要

地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額等の特別控除(地域未来投資促進税制)は、地域経済牽引事業計画の承認を受けた事業者が、承認された事業計画に基づいて設備投資を行う場合に減税措置を受けることができる制度です。
 具体的には、地域未来投資促進法に基づき、地域の特性を生かして高い付加価値を創出し、地域の事業者の相当の経済的効果を及ぼすと認められるものとして、都道府県知事から地域経済牽引事業計画の承認を受けた上で、地域の成長発展の基盤強化に特に資するものとして、国(主務大臣)が定める基準に適合することの確認を受けることで課税の特例が適用できます。

参考:経済産業省資料よりzeiseikaisei.pdf (meti.go.jp)

2.改正の内容

 今回の改正では、適用期限の延長とともに、特に高い付加価値を創出し地域内企業との取引や雇用を通じて地域経済に波及効果をより一層及ぼす事業を、特別償却率及び税額控除率を引き上げる上乗せ支援の対象としています。
 この上乗せ支援について、
 ①対象事業において創出される付加価値額が3億円以上、かつ、
 ②事業を実施する企業の前年度と前々年度の平均付加価値額が50億円以上、
 の要件が新たに追加されました。
 従来の要件と合わせて全て満たすことで、特別償却は取得価額の50%、税額控除は取得価額の5%となる上乗せ措置が適用されます。
 主務大臣の確認要件についても見直しが行われており、要件の判定において売上高を計算する場合には需要の変動等による影響を勘案した計算方法を用いることなどの運用改善が図られています。

3.適用期限

令和7年3月31日まで2年間延長されました。

 

日本企業が、そのDX(デジタルトランスフォーメーション)推進において課題となっているデジタル人材の育成・確保に取り組むとともに、成長性の高い海外市場の獲得を含めた売上上昇につながる「攻め」のデジタル投資に踏み切ることを後押しするため、要件を見直した上で、適用期限を2年間延長します

1.改正の内容

 制度適用に当たっては、産業競争力強化法における事業適応計画の認定要件を満たした上で、「デジタル(D)要件」と「企業変革要件(X)」について主務大臣から確認を受ける必要があります。
 今回の改正では、
 ▶デジタル要件のうち、情報処理推進機構から「DX認定」を受けるためデジタル人材の育成・確保に関する具体的な方策をしめさなければならないこととなりました。
 ▶企業変革要件では、従来の生産性向上または新需要開拓に関する要件が、売上高が10%以上増加することが見込まれることに、取組類型に関する要件が、対象事業の海外売上高比率が一定割合以上となることが見込まれることに、それぞれ見直されました。(下図参照)


 参考:経済産業省資料よりzeiseikaisei.pdf (meti.go.jp)

なお、令和5年4月1日前に認定の申請をした事業適応計画に従って同日以後に取得等をする資産については、同税制措置は適用されません。

2.適用期限

令和7年3月31日まで2年間延長されました。

1.制度の概要

⚫ 近年、全国各地で自然災害が頻発しており、中小企業が自然災害等への事前の備えを行うことは重要。
⚫ 事業継続力強化計画を策定し、自然災害に備える中小企業の防災・減災設備投資を後押しするため、耐震設備を対象設備として追加した上で、適用期限を2年間延長する。


中小企業の自然災害への事前対策の取組を促進する観点から「中小企業防災・減災投資促進税制」が平成31年度税制改正で創設されました。

適用対象者は、中小企業強靭化法において、防災・減災に係る取組内容をとりまとめた「事業継続力強化計画」を策定し、国の認定を受けた青色申告書を提出する中小企業者等です。

適用対象となる設備は下表のとおり。これらの対象設備を、計画等認定を受けた日から1年以内に取得等して事業の用に供した場合には、その取得価額の18%(*)が特別償却できます。
 (*令和5年3月31日以前に取得等した対象設備は20%)

適用に当たっては、(連携)事業継続力強化計画を作成し、主たる所在地を管轄する経済産業局に認定を申請。認定後には計画に記載した設備を取得し、取得後には対象設備の償却限度額の計算明細書を添付して、税務申告を行うことになります。


参考:経済産業省資料よりzeiseikaisei.pdf (meti.go.jp)

2.改正の内容

適用期限が2年間延長されたほか、対象設備に耐震装置が追加されました。
また、早期取得を図る観点から、令和7年4月以降に対象設備を取得等する場合には、特別償却率は16%となります。

3.適用期限

令和7年3月31日までに(連携)事業継続力強化計画の認定を受け、認定を受けた日から1年を経過する日までに、計画に記載した対象設備を取得等して事業の用に供した場合に適用されます。

 

1.制度の概要

中小企業

 中小企業投資促進税制は、青色申告書を提出する中小企業者等が機械装置等の対象設備を取得や製作等をした場合に、取得価額の30%の特別償却または7%の税制控除が選択適用できる制度です。
税額控除は、資本金3,000万円以下の中小企業者等に限ります。

対象となる業種及び設備は下表のとおりで、
 対象設備のうち、下の①~③は対象外となります。
 ①中古品
 ②貸し付けの用に供する設備
 ③匿名組合契約等の目的である事業の用に供する設備
  
そのため、令和3年度税制改正で対象業種に追加された不動産業や物品賃貸業が、貸付のために取得等した資産は適用できないこととなります。
 ・サーバー用オペレーティングシステム
 ・サーバー用仮想化ソフトウェア
 ・データベース管理ソフトウェア
 ・不正アクセス防御ソフトウェア等で、
  国際標準化機構の規格に基づく評価・認証がないソフトウェアも対象外です。

参考:経済産業省資料zeiseikaisei.pdf (meti.go.jp)


また、一定の電子計算機やデジタル複合機は平成29年度税制改正で対象外となりましたので、これらを取得する場合には「中小企業経営強化税制」を活用することが望まれます。

 特例適用にあたっての手続きは、法人税の確定申告書に、
 ・特別償却の場合は「特別償却の付表」と適用額明細書、
 ・税額控除の場合は「別表」と適用額明細書
  を添付して提出します。

なお、令和3年度では、
 ・特別償却は2万3,201件(適用総額1,934億円)
 ・税額控除は2万8,656件(適用総額186億円)
  が特例の適用を受けています。

2.改正の内容

 コロナ禍に加えて物価高や資源高騰により中小企業を取り巻く事業環境は厳しさを増している中、成長の底上げに向けて中小企業者等の設備投資を促進する観点から、適用期限が2年間延長されました。

 対象資産については、コインランドリー業(主要な事業であるものを除く)の用に供する機械装置でその管理のおおむね全部を他の者に委託するものが除外されました。
 投資額の大部分を初年度から即時償却できる節税方法としてコインランドリー投資を行う者が増えていましたが、中小企業経営強化税制とともに特例措置の適用対象外となっています。

 また、総トン数500トン以上の船舶にあっては、環境への負荷低減に資する設備の設置状況等を国土交通大臣に届け出た船舶に限定されました。

3.適用期限

 令和7年3月31日まで2年間延長されました。

1.制度の概要

  【中小企業経営強化税制】は、青色申告書を提出する中小企業者等が、中小企業等経営強化法の制定を受けた経営力向上計画に基づき、一定の整備を新たに取得等して指定事業の用に供した場合に、
 ■ 即時償却  又は
 ■ 取得価額の10%の税額控除 (資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)
の税額控除を選択適用することができる制度です。
原則、設備の取得前に経営力向上計画の認定を受ける必要があります。

 対象となる設備は
  ・生産性向上設備(A類型)
  ・収益力強化設備(B類型)
  ・デジタル化設備(C類型)
  ・経営資源集約化設備(D類型)
 の4類型。それぞれ要件が定められています。
 例えばA類型では、機械装置等の一定の設備のうち、
  ①生産効率や制度等が旧モデルと比較して年平均1%以上向上する設備
  ②最新モデルである必要はありませんが一定期間内に販売されたモデルの2つの要件を満たす必要があり、適用に当たっては工業会等の確定を受けて証明書を取得しなければなりません。(下図参照)

 

参考:経済産業省資料より zeiseikaisei.pdf (meti.go.jp)

 なお、テレビ会議システム等に係るソフトウェアやテレワーク用電子計算機等の器具備品など、中小企業等経営強化法上の認定を受けた経営力向上計画に基づいて働き方改革の推進に資する減価償却資産を取得し、自社が営む指定事業(※)の用に供する場合にも、適用を受けることができます。

 ※指定事業とは「中小企業投資促進税制の対象業種」に該当するすべての事業が、「中小企業経営強化税制の指定事業」となります。(下表参照)

中小企業投資促進税制の対象業種
製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、
港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業については生活衛生同業組合の組合員が行うものに限る。)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、通信業、損害保険代理業及びサービス業(映画業以外の娯楽業を除く)、不動産業、物品賃貸業
   △性風俗関連特殊営業に該当するものは除く

 また、選択適用となる税額控除の控除額は、
 ・「中小企業経営強化税制」と「中小企業投資促進税制」の控除税額の合計
 ・その事業年度の法人税額の20%が上限
 ・税制控除の限度額を超える金額は、翌事業年度に繰り越すことが可能
特別償却についても、限度額まで償却費を計上しなかった場合には、その償却不足額を翌事業年度に繰り越すことができます。

2.改正の内容

 新型コロナウイルス感染症の影響により、中小企業による設備投資額がここ数年大きく減少しています。中小企業者等の成長及び発展が日本経済の活性化に果たす役割の重要性に鑑み、中小企業者等における生産性の高い設備やIT化等への設備投資を促進することで経営力の向上を図る観点から、適用期限が2年間延長されました。

 また適用対象のうち、管理の概ね全部を他社に委託する機械装置で、コインランドリー業又は暗号資産マイニング業(その中小企業者等の主要な事業であるものを除く)のように供するものは対象外とされました。

3.適用期限

令和7年3月31日まで2年間延長されました。

 

納税地の特例制度等について

令和5年1月1日以後の納税地の異動・変更
・異動届出書・変更届出書の提出は不要とされます
・転居については市役所等からの住民票の異動情報で確認、転居以外については確定申告書の記載内容で確認されます

注)令和5年1月1日以後の納税地の変更等について適用されます

給与等の支払を受ける居住者は、給与所得者の保険料控除申告書に記載すべき事項を電磁的方法により提供する場合には、社会保険料の金額又は小規模企業共済等掛金の額の支払をした旨を証する書類の提出又は提示に代えて、その書類に記載されるべき事項が記録されたQRコード付き証明書による提出や電磁的記録による提出(データ提出)ができることとされました。

注)令和4年10月1日以後に給与所得者の保険料控除申告書を提出する場合に適用されます

個人住民税において、特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額に係る所得の課税方式を所得税と一致させることとされます。

<改正前>
所得税と個人住民税で異なる課税方式の選択が可能でした
例:国民健康保険料の負担を考慮し、所得税で総合課税(+配当所得)、個人住民税では申告不要を選択する

注)令和6年度分以後の個人住民税について適用されます

令和6年1月1日以後に建築確認を受ける住宅
又は、
建築確認を受けない住宅で登記簿上の建築日付が令和6年7月1日以降のもの
である場合には、一定の省エネ基準を満たすものであることとされた上で、
適用期限が令和5年12月31日まで2年延長されました

注)令和4年1月1日以後に行う譲渡資産の譲渡に係る買換資産について適用されます

対象住宅の新築等をして令和4年及び令和5年に居住の用に供した場合の対象住宅は
・認定長期優良住宅
・認定低炭素住宅
・特定エネルギー消費性能向上住宅
とされ、
標準的な性能強化費用に係る税額控除対象限度額は650万円、
控除率は10%とされた上で、
適用期限が令和5年12月31日まで2年延長されました。

注)認定住宅等の新築等をして、令和4年1月1日以後に自己の居住の用に供する場合に適用されます

令和4年及び令和5年に住宅耐震改修をした場合の標準的な工事費用の額に係る控除対象限度が250万円、控除率が10%とされた上で、適用期限が令和5年12月31日まで2年延長されました。

▶令和4年1月1日以後に住宅耐震改修をする場合に適用

 

1 改正の概要

項 目 内 容
適用期限 令和7年入居分まで4年間延長
借入限度額

①消費税率引き上げに伴う反動減対策としての特定取得等の上乗せ措置は終了
②住宅の環境性能などに応じて、新築住宅等・既存住宅ともに上乗せ措置が講じられました

控除率 1%から0.7%に引下げ
控除期間 ①新築住宅及び買取再販住宅(注1)については13年
(令和6年・7年入居の認定住宅等(注2)については10年)
②既存住宅については10年
(注1)買取再販住宅とは、既存住宅を宅地建物取引業者が一定のリフォームにより良質化した上で販売する住宅のことを指します。
(注2)認定住宅等は、認定長期優良住宅・認定低炭素住宅、特定エネルギー消費性能向上住宅、エネルギー消費性能向上住宅のことを指します。
所得要件 適用対象者の所得要件を合計所得金額3,000万円以下から2,000万円以下に引き下げ
床面積要件 令和5年以前に建築確認を受けた新築住宅については、合計所得金額1,000万円以下の者に限り、40㎡以上に緩和
その他 ①令和6年以降に建築確認を受ける住宅(登記簿上の建築日付が同年6月30日以前のものを除きます)又は建築確認を受けない住宅で登記簿上の建築日付が同年7月1日以降のもののうち、一定の省エネ基準を満たさない新築又は建築後使用されたことのない住宅は住宅ローン控除の対象外となります。
②既存住宅における築年数要件(耐火住宅25年、非耐火住宅20年)は廃止され、「新耐震基準に適合している住宅」又は「昭和57年以降に建築された住宅」とされました。

2 改正後の住宅ローン控除

入居年 省エネ住宅 令和4年・5年 令和6年・7年
新築住宅
買取再販
借入限度額 長期優良低炭素 5,000万円 4,500万円
特定省エネ向上 4,500万円 3,500万円
エネ性能向上 4,000万円 3,000万円
その他の住宅 3,000万円 対象外(令和5年末までの新築の建築確認の場合は2,000万円(10年))
控除期間 13年
既存住宅 借入限度額 長期優良低炭素 3,000万円

特定省エネ向上
エネ性能向上
その他の住宅 2,000万円
控除期間  10年
控除率 一律0.7

所得要件 合計所得2,000万円以下

床面積要件 50㎡以上(令和5年以前に建築確認を受けた新築住宅については合計所得金額1,000万円以下の者に限り、40㎡以上に緩和
所得税から控除しきれなかった額 所得税の課税総所得金額等の5%(最高9.75万円)を控除限度額として個人住民税から控除

3 住宅ローン控除の確定申告手続等の見直し

(1)令和5年1月1日以後に居住の用に供する家屋について、住宅ローン控除の適用を受けようとする個人は、住宅借入金等に係る一定の債権者(銀行等)に対して、その個人の氏名及び住所、個人番号その他の一定の申請事項を記載した申請書(適用申請書)の提出(電磁的方法による提供を含みます)をしなければなりません。
(2)適用申請書の提出を受けた債権者(銀行等)は、その適用申請書の提出を受けた日の属する年以後10年内の各年の10月31日(その適用申請書の提出を受けた日の属する年については、その翌年1月31日)までに、申請事項及びその適用申請書の提出をした個人のその年の12月31日における住宅借入金等の金額等を記載した調書を作成し、その債権者の本店所在地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
この場合において、その債権者は、その適用申請書につき帳簿を備え、適用申請書の提出をした個人の各人別に、申請事項を記載し、又は記録しなければなりません。
(3)住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除証明書の記載事項に、住宅借入金等の年末残高が追加されました。
(4)令和5年1月1日以後に居住の用に供する家屋に係る住宅ローン控除の適用を受けようとする個人は、住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書及び新築の工事の請負契約書の写し等について、確定申告書への添付が不要とされます。
この場合において、税務署長は確定申告期限等から5年間、その請負契約書の写し等の提示又は提出を求めることができ、その適用を受ける個人はその提示又は提出をしなければなりません。
(5)給与所得者で年末調整の際に、令和5年1月1日以後に居住の用に供する家屋に係る住宅ローン控除の適用を受けようとするものは、住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書については、給与取得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書への添付が不要とされました。

 

1 電子帳簿等保存制度に係る手続きの簡素化

電子帳簿等保存とは
 文書保存の負担軽減を図る観点から各税法で保存が義務付けられている帳簿書類は、一定の要件の下で、プリントアウトせずに、作成した電子データのまま保存することができます。

改正の内容

①事前承認の廃止
 税務署長の事前承認制度が廃止されます。

②保存要件の緩和
 保存要件については従来の「システム関係書類等を備え付けること」、「電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、記録事項を画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できること」に加えて、「国税職員の質問検査権に基づくその国税関係帳簿書類に係るデータのダウンロードの求めがある場合にはこれに応じること」を満たすことで電子データの保存を可能とするよう要件が緩和されます。

③インセンティブによる差別化
 従来の保存要件を満たして電子データを保存し、その旨を届け出た者(優良電子帳簿保存)については、所得税、法人税または消費税に係る修正申告や更生があった場合には、過小申告加算税が5%軽減されます。

④青色申告特別控除の取扱い
 見直しに伴い、所得税の青色申告特別控除の控除額65万円の適用要件については、優良電子帳簿保存の場合にのみ適用され、一般電子帳簿保存の場合には適用されません。

適用期日
 令和4年1月1日から施行され、上記1①②は同日以後に備付けを開始する国税関係帳簿又は保存を行う国税関係書類について、③は同日以後に法定申告期限が到来する国税について適用されます。

2 スキャナ保存制度の要件緩和及び不正行為に係る担保措置の創設

スキャナ保存とは
 文書保存の負担軽減を図る観点から、各税法で保存が義務付けられている書類について一定の要件の下で、紙のままではなくスキャナで読み取った電子データの形式で保存することができます。

 対象となる書類
 ・取引相手から受け取った書類
 ・自己が作成して取引相手に交付する書類の写し
  (例)契約書、見積書、注文書、納品書、請求書、領収書 など

改正の内容

①事前承認の廃止
 税務署長の事前承認制度が廃止され、事務負担が軽減されます。

②保存要件の緩和
・タイムスタンプ要件の緩和

 国税関係書類の受領者等がその書類に署名し読み取った上、タイムスタンプを3日以内に付与する必要がありましたが、自署が不要となり、タイムスタンプの付与期間が2か月以内へと延長されます。
 また、保存データについて訂正又は削除を行った事実及び内容を確認することができるシステムにおいて、そのデータを保存することでタイムスタンプ付与に代えることができます。

・適正事務処理要件の廃止
 相互けん制や定期的な検査及び再発防止策の社内規定整備等の適正事務処理要件については、廃止されるため、紙原本による確認が不要となります。このため、スキャン後は直ちに原本の廃棄をすることができるようになります。

・検索要件の緩和
検索項目が取引等の年月日、取引金額及び取引先に限定されるとともに、保存義務者が国税職員による調査の際に保存データのダウンロードに応じる場合に、範囲指定および項目を組み合わせて設定できる機能を確保しておく必要がなくなります。

③不正行為に係る担保措置
 要件を緩和する一方で、不正行為抑止のため、電子データに関連して改ざん等の不正が把握された場合には、重加算税を10%加重する措置が講じられます。

適用期日
 令和4年1月1日から施行され、上記2①②は同日以後に備付を開始する国税関係帳簿又は保存を行う国税関係書類について、③は同日以後に法定申告期限が到来する国税について適用されます。

3 電子取引に係るデータ保存制度の要件の見直し

電子取引とは
 取引情報(取引に関して受領し、または交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいいます)の授受を電磁的方法により行う取引をいいます。

改正の内容

①保存要件の緩和
・タイムスタンプ要件

 スキャナ保存制度と同様に付与期間が2か月以内へと延長されます。

・検索要件の緩和
 上記2②の検索要件の緩和と同様の措置がとられるほか、保存義務者が判定期間中の売上高1,000万円以下の事業者の場合には、全ての検索要件が不要となります。

判定期間とは、
 個人事業者の場合は、電子取引が行われた日の属する年の前々年の1月1日から12月31日までの期間、法人の場合は、電子取引が行われた日の属する事業年度の前々事業年度をいいます。

②不正行為に係る担保措置
 上記2③と同様の措置がとられます。

③書面出力による保存の廃止
 電子取引の取引情報に係る電磁的記録を出力することにより作成した書面等の保存をもってその電磁的記録の保存に代えることができる措置については、廃止されます。

適用期日
 令和4年1月1日から施行され、同日以後に行う電子取引の取引情報について適用されます。

短期退職手当等に係る退職所得の金額については、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額とされました。

1 短期退職手当の収入金額から退職所得控除額を控除した残額が300万円以下である場合
   その残額の2分の1に相当する金額
2 上記1に掲げる場合以外の場合
   150万円とその短期退職手当等の収入金額から300万円に退職所得控除額を加算した金額を控除した残額との合計額

短期退職手当等とは
 退職手当等のうち、短期勤続年数(勤続年数のうち、役員等以外の者としての勤続年数が5年以下であるもの)に対応する退職手当等として支払を受けるものであって、特定役員退職手当等に該当しないもの

適用期日
 令和4年分の所得税、5年度分以後の個人住民税から適用されます。

1 適用期限の延長

 住宅の取得等にあたり特別特例取得に該当するものをした個人が、その家屋に令和3年1月1日から令和4年12月31日までに居住した場合は、住宅ローン控除の特例が適用できます。 

特別特例取得とは
その対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合の住宅の取得等で、次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定める期間内にその契約が締結されているもの
注文住宅 令和2年10月1日から令和3年9月30日までの期間
分譲住宅・既存住宅の取得、増改築 令和2年12月1日から令和3年11月30日までの期間

2 床面積要件の緩和

 夫婦2人世帯や単身世帯が増えていることへの配慮や経済対策として、今回の改正の契約期間・入居期間を満たす場合に限り、合計所得金額が1,000万円以下の者については、床面積が40㎡以上50㎡未満である住宅も対象とする措置が行われました。

適用時期

 特別特例取得した家屋へ令和4年12月31日までに居住した者が対象となります。

新型コロナ税特法6の2 附則121

1⃣ 住宅ローン控除の控除期間の特例の延長等

(1)住宅の取得等に係る消費税の税率が10%時における住宅ローン控除の控除期間13年間の特例について、特別特例取得に該当するものをした個人が、その特別特例取得をした家屋を令和3年1月1日から令和4年12月31日までの間にその者の居住の用に供した場合には、控除期間13年間の特例を適用することができます。

(2)経済対策として、住宅ローン控除の控除期間13年間の特例について、床面積が40㎡以上50㎡未満である住宅の用に供する家屋についても適用可能とします。ただし、控除の適用を受ける年分の合計所得金額が1,000万円以下とします。

(3)会計検査院の指摘を踏まえ、住宅ローン年末残高の1%を控除する仕組みについては、1%を上限に支払利息額を考慮して控除額を設定するなど、控除額や控除率のあり方を令和4年度税制改正において見直すとしています。

●適用時期…令和3年1月1日から令和4年12月31日までの間に居住の用に供した場合

2⃣ 退職所得課税の見直し

勤続年数5年以下の法人役員等以外の退職手当(以下「短期退職手当等」といいます。)について、退職所得控除額を控除した残額の300万円を超える部分については、税負担の平準化を図る措置とされる「2分の1課税」を適用しないこととします。

●適用時期…令和4年分以後の所得税から

3⃣ 同族会社が発行した社債利子等の見直し

同族会社が発行した社債の利子で、その同族会社の判定の基礎となる株主である法人と特殊の関係のある個人及びその親族等が支払を受けるものを総合課税の対象とします。なお、法人と特殊の関係のある個人とは、法人との間に発行済株式等の50%超の保有関係がある個人等をいいます。
また、その個人及びその親族等が支払をうけるその同族会社が発行した社債の償還金についても、総合課税の対象とします。

●適用時期…令和3年4月1日以後に支払を受けるべき社債の利子及び償還金

4⃣ セルフメディケーション税制の適用期限の延長等

セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)については、次の(1)(2)の措置を講じた上で、適用期限を令和8年12月31日まで5年延長します。

●適用時期…令和4年分以後の所得税から

1 事業所得や不動産所得などがある人

令和2年分の事業所得などの各種の所得金額の合計額から、雑損控除などの所得控除の合計額を差し引き、その残額を基にして算出した税額が、配当控除額や年末調整の際に控除を受けた住宅借入金等特別控除額の合計額を超える人は確定申告が必要です。

2 土地や建物などを譲渡した人

令和2年中に土地や借地権、建物などを売って所得を得た人は、それらの所得(分離課税の譲渡所得)について、事業所得などとは分離して税額を計算します。
 この場合には、申告書B第一表及び第二表のほかに第三表(分離課税用)を用い、事業所得などその他の所得も併せて、確定申告をします。
 土地や建物を売った年の1月1日現在で、その土地や建物の所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得に、5年以下なら短期譲渡所得になり、それぞれ別の方法で税額を計算します。
 自分が住んでいる家と敷地を売った場合や、以前住んでいた家と敷地を住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売った場合には、一定の条件の下、税負担が軽減される特例があります。

3 還付申告について

 確定申告をしなくてもよい人でも、源泉徴収税額や予定納税額が納めすぎとなっている人や、給与所得者で医療費控除、寄付金控除、住宅借入金等特別控除、雑損控除などの適用を受けようとする人は還付申告をすることができます。

4 損失申告について

令和2年中の所得金額の合計額が赤字になるなどの理由で、純損失や雑損失の繰越控除、純損失の繰戻しによる還付を受けようとする人は、損失申告をすることができます。

5 青色申告特別控除

青色申告特別控除について、取引を正規の簿記の原則に従って記録している者に係る控除額を55万円(改正前:65万円)に引き下げる一方、取引を正規の簿記の原則に従って記録し、次の①②の要件のいずれかを満たす者に係る控除額は65万円とされました。
 ①その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、法律に定めるところにより、「電磁的記録の備付け及び保存」等を行っていること
 ②その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出を、その提出期限までにe-Taxを使用して行うこと

青色控除額基礎控除額合計    改正前の要件
65万円38万円103万円(1)正規の簿記の原則で記帳
(2)貸借対照表と損益計算書を添付
(3)期限内申告
改正前
青色控除額基礎控除額合計要件
65万円48万円113万円改正前の要件

e-Taxによる電子申告
又は電子帳簿保存
55万円48万円103万円改正前の要件
改正後

6 基礎控除

基礎控除については、控除額が一律10万円引き上げられるとともに、合計所得金額が2400万円を超える個人についてはその合計所得金額に応じて控除額が逓減し、合計所得金額が2500万円を超える個人については控除の適用はできないこととされました。

<基礎控除の改正>
改正前の基礎控除額:38万円(所得制限なし)

合計所得金額基礎控除額
2,400万円以下48万円
2,400万円超~2,450万円以下32万円
2,450万円超~2,500万円以下16万円
改正後

7 給与所得控除

給与所得控除額は一律10万円引き下げられ、その上限額が195万円(改正前:220万円)とされるとともに、上限額が適用される給与等の収入金額は850万円(改正前:1000万円)となりました。

8 公的年金等控除

公的年金等控除は、一律10万円(又は公的年金に係る雑所得以外の所得にかかる合計所得金額に応じて20万円あるいは30万円)引き下げられることとされ、公的年金等の収入合計が1000万円を超える場合の控除額について上限を設けることとされました。

9 所得金額調整控除

所得金額調整控除が次のとおり創設されました。
 ①その年の給与等の収入金額が850万円を超える居住者で、本人が特別障害者に該当するもの又は年齢23歳未満の扶養親族を有するもの若しくは特別障害者である同一生計配偶者若しくは扶養親族を有するものの総所得金額を計算する場合には、給与等の収入金額から850万円(1000万円超の場合は1000万円)を控除した残額の10%相当額を、給与所得の金額から控除する。
 ②その年の給与所得控除後の給与等の金額及び公的年金等に係る雑所得の金額がある居住者で、その合計額が10万円を超えるものの総所得金額を計算する場合には、給与所得控除後の給与等の金額及び公的年金等に係る雑所得の金額(それぞれ10万円が限度)の合計額から10万円を控除した残額を、給与所得の金額から控除する

10 各種所得控除等を受けるための扶養親族等の合計所得金額要件等の改正

同一生計配偶者、扶養親族、源泉控除対象配偶者、配偶者特別控除の対象となる配偶者及び勤労学生の合計所得金額要件が、それぞれ10万円引き上げられました。

<所得税に関する取扱い>

国や地方公共団体からの助成金については、個別の助成金の事実関係によって、次のとおり課税関係が異なります。

1 新型コロナウイルス感染症等の影響に関連して国等から支給される主な助成金等の課税関係(例示)

非課税

【支給の根拠となる法律が非課税の根拠となるもの】
・新型コロナウイルス感染症対応休業支援金(雇用保険臨時特例法7条)
・新型コロナウイルス感染症対応休業給付金(雇用保険臨時特例法7条)

【新型コロナ税特法が非課税の根拠となるもの】
・特別定額給付金(新型コロナ税特法4条1号)
・子育て世帯への臨時特別給付金(新型コロナ税特法4条2号)

【所得税法が非課税の根拠となるもの】
〇学資として支給される金品(所得税法9条1項15号)
・学生支援緊急給付金
〇心身または資産に加えられた損害について支給を受ける相当の見舞金(所得税法9条1項17号)
・低所得のひとり親世帯への臨時特別給付金
・新型コロナウイルス感染症対応従事者への慰労金
・企業主導型ベビーシッター利用者支援事業の特例措置における割引券
・東京都のベビーシッター利用支援事業における助成

課 税

【事業所得等に区分されるもの】
・持続化給付金(事業所得者向け)
・家賃支援給付金
・農林漁業者への経営継続補助金
・文化芸術・スポーツ活動の継続支援
・東京都の感染拡大防止協力金
・雇用調整助成金
・小学校休業等対応助成金
・小学校休業等対応支援金

【一時所得に区分されるもの】
・持続化給付金(事業所得者向け)
・Go Toキャンペーン事業における給付金

【雑所得に区分されるもの】
・持続化給付金(雑所得者向け)

2 国等から支給される主な助成金等の課税関係(例示)
(新型コロナウイルス感染症等の影響に関連して給付されるものを除く。)

非課税

【支給の根拠となる法律が非課税の根拠となるもの】
・雇用保険の失業等給付(雇用保険法12条)
・生活保護の保護金品(生活保護法57条)
・児童(扶養)手当(児童手当法16条、児童扶養手当法25条)
・被災者生活再建支援金(被災者生活再建支援法21条)

【租税特別措置法が非課税の根拠となるもの】
・簡素な給付措置(臨時福祉給付金)(措置法41条の81項1号)
・子育て世帯臨時特例給付金(措置法41条の81項2号)
・年金生活者等支援臨時福祉給付金(措置法41条の81項3号)

【所得税法が非課税の根拠となるもの】
〇学資として支給される金品(所得税法9条1項15号)
・東京都認証保育所の保育料助成金

課 税

【事業所得等に区分されるもの】
・肉用牛肥育経営安定特別対策事業による補てん金

【一時所得に区分されるもの】
・すまい給付金
・地域振興券

【雑所得に区分されるもの
・企業主導型ベビーシッター利用者支援事業における割引券(通常時のもの)
・東京都のベビーシッター利用支援事業における助成(通常時のもの)

空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例の適用要件の見直し等
【適用期限を令和5年12月31日まで4年延長、平成31年4月1日以後の譲渡について適用】

空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例について、老人ホーム等に入所をしたことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋及びその家屋の敷地の用に供されていた土地等は、次に掲げる要件その他一定の要件を満たす場合に限り、相続の開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていたものとして本特例を適用するほか所要の整備を行った上、その適用期限を4年延長します。

①被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、かつ、相続の開始の直前まで老人ホーム等に入所をしていたこと。

②被相続人が老人ホーム等に入所をした時から相続の開始の直前まで、その家屋について、その者による一定の使用がなされ、かつ、事業の用、貸付の用又はその者以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。

公益社団法人、公益財団法人及び特定一般法人その他公益を目的とする事業を営む法人に対して財産を贈与又は遺贈した場合で、その寄附が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与することなど非課税承認の要件を満たすものとして国税庁 長官の承認を受けたときは、その寄附に係る譲渡所得は非課税とされます。

ただし、その財産(以下「非課税財産」)を公益目的に使用していないときは、公益法人等に対して取戻し課税が行われることとされます。この場合において、公益法人等が非課税財産を「収容、災害及び一定の事由」により譲渡した場合において、その譲渡による収入金額の全額をもって代替資産を取得したときには、非課税が継続されます。

平成32年分以後の所得税及び平成33年度分以後の個人住民税について適用します。

給与所得控除の見直しに合わせて行われる給与所得者の特定支出控除の範囲の拡充について

 

特定支出控除について

①特定支出の範囲に、職務の遂行に直接必要な旅費等で通常必要と認められるものを加えること

②特定支出の範囲に含まれている単身赴任者の帰宅旅費について、1月に4往復を超えた旅行に係る帰宅旅費を対象外とする制限を撤廃すること

③その帰宅のために通常要する自動車を使用することにより支出する燃料費及び有料道路の料金の額を追加すること

等の見直しが行われます(新所法57の2②二)

基礎控除の引き上げ及び給与所得控除の引き下げに伴い、基礎控除及び給与所得控除の金額等を踏まえて設定されている税制上の金額基準等について、必要な調整が行われます。

具体的に調整が必要な控除及び税制は、下の図に揚げるとおりとされます。

図 調整を要する主な控除・措置

区分 改正前 改正後
同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件 38万円以下 48万円以下
源泉控除対象配偶者の合計所得金額要件 85万円以下 95万円以下
配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額要件 38万円超
123万円以下
48万円超
133万円以下
配偶者特別控除の控除額の算定の基礎となる配偶者の合計所得金額の区分 85万円以下 95万円以下
勤労学生の合計所得金額要件 65万円以下 75万円以下
家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例における必要経費に算入する金額の最低保証額 65万円 55万円
非居住者の公的年金等の分離課税の対象金額等の算定における控除額計算の基礎となる額 65歳未満 6万円 5万円
65歳以上 10万円 9万5千円
取引を正規の簿記の原則に従って記録している者に係る青色申告特別控除の控除額 原則 65万円 55万円
例外(注) 65万円

(注)青色申告特別控除の控除額の例外(新措法25の2④)

正規の簿記の原則に従って記録している者であって、次に掲げる要件のいずれかを満たすもの

①その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法の特例に関する法律に定めるところにより電磁的記録の備付け及び保存を行っていること。

②その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出を、その提出期限までに電子情報処理組織(e-Tax)を使用して行うこと。

平成30年度税制改正では、改正前の所得控除方式から変更した場合に税負担の変動が急激なものとならない「逓減・消失型の所得控除方式」が採用されます。

そこで基礎控除については、
①控除額を一律10万円引き上げ、
②合計所得金額が2,400万円を超える個人については
その合計所得金額に応じて控除額が逓減し、
合計所得金額が2500万円を超える個人については
基礎控除の適用はできないこととされます(新所法86①)。

なお、地方税についても同様とされます(新地方法34、同法314の2)。

 

図表 基礎控除額

合計所得金額(注)     基礎控除額
  改正前   改正後
 所得税  住民税所得割  所得税  住民税所得割
2,400万円以下     38万円 33万円  48万円 43万円
2,400万円超2,450万円以下  32万円 29万円
2,450万円超2,500万円以下  16万円 15万円
2,500万円超  -  ―

(注)年末調整において、基礎控除の適用を受ける場合に合計所得金額の見積額を申告することとされます(新所法190二ホ、同法195の3①②)

なお、地方税においては、前年の合計所得金額で判定されます。また、前年の合計所得金額が2,500万円を超える所得割の納税義務者については、「調整控除(地方法37、同法314の6)」の規定を適用しないこととされます(新地方法37、同法314の6)。

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