消費税

● 適格請求書発行事業者である個人が家事用資産の売却等(不課税売上げ)を行った場合、売り手は適格請求書を交付することができないため、買い手は仕入税額控除をすることができません。
一方、買い手が事業として資産の譲渡等を受けた場合、家事用資産か否かに関わらず、課税仕入れに該当することとなるため、買い手が仕入明細書を作成することで、仕入税額控除が可能となっています。

● 令和4年度改正で、仕入明細書等による仕入税額控除は、
その課税仕入れが課税仕入れの相手方(売り手)が行う課税資産の譲渡等に該当する場合に限定されることとされました。

1.適格請求書等保存方式(インボイス制度)の見直し

課税期間の中途における適格請求書発行事業者への登録

免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には、その登録日から適格請求書発行事業者となることができることとされました。

免税事業者

令和5年10月1日の属する課税期間 登録可
令和5年10月1日から令和11年9月30日の属する課税期間 登録不可 ➡ 登録可
上記以外の課税期間 登録不可


 
 
 

〇 適格請求書を交付できるのは、適格請求書発行事業者に限られます。

〇 適格請求書発行業者となるためには、税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書」(以下「登録申請書」といいます。)を提出し、登録を受ける必要があります。
なお、課税事業者でなければ登録を受けることはできません。

適格請求書等保存方式の概要

令和5年10月1日から複数税率に対応した仕入税額控除の方式として、「適格請求書等保存方式」(いわゆるインボイス制度)が導入されます。

適格請求書等保存方式の下では、「帳簿」及び税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書」などの請求書の保存が仕入税額控除の要件となります。

■「適格請求書」とは?
適格請求書とは、「売手が、買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段」であり、一定の事項が記載された請求書や納品書その他これらに類する書類をいいます。

区分記載請求書等保存方式

制度の実施前においては、仕入税額控除の適用を受けるためには、法定事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が要件とされています(請求書等保存方式)。

令和元年10月1日から令和5年9月30日までの間は、この仕入税額控除の要件について、制度実施前における請求書等保存方式を基本的に維持しつつ、その仕入れが軽減税率の対象となる資産の譲渡等(以下「軽減対象資産の譲渡等」といいます。)に係るものか、それ以外のものなのかの区分を明確にするための記載事項が追加された帳簿及び請求書等の保存が要件とされます(区分記載請求書等保存方式)。

 

区分経理

軽減税率制度の実施に伴い、消費税等の税率が軽減税率(8%)と標準税率(10%)の複数税率になりますので、事業者は、消費税等の申告等を行うために、税率ごとに区分経理を行う必要があります。

外食とは

「外食」は、軽減税率の対象となりません。ここでいう「外食」とは、飲食店業等の事業を営む者が行う食事の提供をいい、次の①、②の要件をいずれも満たすものをいいます。

①テーブル、椅子、カウンターその他の飲食に用いられる設備(以下「飲食設備」といいます。)のある場所において(場所要件)

②飲食料品を飲食させる役務の提供(サービス要件)

具体例としては、レストランやフードコートでの食事の提供が「外食」に該当します。

飲食店業等の事業を営む者が行うものであっても、いわゆる「テイクアウト(持ち帰り販売)」など、飲食料品を持ち帰りのための容器に入れ、又は包装を施して行う譲渡は、飲食料品を飲食させる役務の提供には当たらない単なる飲食料品の販売であることから、軽減税率の対象となります。

 

一体資産とは

「一体資産」とは、例えば、おもちゃ付のお菓子のように、次のイ及びロのいずれにも該当するものをいいます。

イ 食品と食品以外の資産があらかじめ一の資産を形成し、又は構成しているもの

ロ 一の資産の価格のみが提示されているもの

「一体資産」の譲渡は、原則として軽減税率の対象ではありませんが、次のいずれの要件も満たす場合は、飲食料品の譲渡として、その全体が軽減税率の対象となります。

①一体資産の譲渡の対価の額(税抜価額)が一万円以下であること

②一体資産の価額のうちに当該一体資産に含まれる食品に係る部分の価額の占める割合として合理的な方法により計算した割合が3分の2以上であること

飲食料品とは

軽減税率の対象品目である「飲食料品」とは、食品表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類を除きます。以下「食品」といいます。)をいい、食品と食品以外の資産があらかじめ一の資産を形成し、又は構成しているもの(その一の資産に係る価格のみが提示されているものに限ります。以下「一体資産」といいます。)のうち、一定の要件を満たすものも含みます。

この「食品」とは、全ての飲食物をいい、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に規定する「医薬品」、「医薬部外品」及び「再生医療等製品」を除き、食品衛生法に規定する「添加物」を含むものとされています。

なお、ここでいう「飲食物」とは、人の飲用又は食用に供されるものをいいます。

したがって、「飲食料品」とは、人の飲用又は食用に供される、
①米穀や野菜、果実などの農産物、食肉や生乳、食用鳥卵などの畜産物、魚類や貝類、海藻類などの水産物

②めん類・パン類、菓子類、調味料、飲料等、その他製造又は加工された食品

③添加物(食品衛生法に規定する物)

➃一体資産のうち、一定の要件を満たすもの

をいい、

・酒税法に規定する酒類、医薬品、医薬部外品、再生医療等製品を除きます。

ただし、次の外食やケータリング等は「飲食料品の譲渡」に含まれません。

・「外食」
飲食店営業等、食事の提供を行う事業者が、テーブル・椅子等の飲食に用いられる設備(飲食設備)がある場所において、飲食料品を飲食させる役務の提供

・「ケータリング、出張料理等」
相手方が指定した場所において行う加熱、調理又は給仕等の役務を伴う飲食料品の提供

軽減税率制度の実施に伴い必要となる事業者の対応

事業者は、日々の業務において、税率ごとに売上げや仕入れ(経費)を区分経理した上で、申告・納税を行うことが必要となります。

図:国税庁「消費税軽減税率制度の手引き」3Pより

(参考)平成28年11月の税制改正による改正の概要(税率引上げ時期の変更等)

改正前 改正後
■税率引上げ時期 平成29年4月1日 令和元年10月1日
■軽減税率制度
  ●実施時期 平成29年4月1日 令和元年10月1日
  ●仕入税額控除の方式
   区分記載請求書等保存  方式の適用期間 平成29年4月1日~
令和3年3月31日
令和元年10月1日~令和5年9月30日
   適格請求書等保存方式  の導入時期 令和3年4月1日 令和5年10月1日
   適格請求書発行事業者  の登録申請開始時期 平成31年4月1日 令和3年10月1日
  ●税額計算の特例の対  象者 中小事業者以外の
事業者も対象
中小事業者のみ対象

適格請求書等保存方式(令和5年10月1日~)

複数税率に対応した仕入税額控除の方式として、令和5年10月1日から「適格請求書等保存方式」(いわゆる「インボイス制度」)が導入されます。
「適格請求書等保存方式」の下では、帳簿及び、適格請求書発行事業者として税務署長の登録を受けた課税事業者から交付を受けた適格請求書などの請求書等の保存が、仕入税額控除の適用を受けるための要件となります。
なお、適格請求書を交付しようとする課税事業者は、適格請求書発行事業者として登録を受ける必要があり、その登録申請は令和3年10月1日からとなります。

 

税額計算とその特例

軽減税率制度の実施に伴い、消費税等の税率が複数税率になりますので、区分経理に基づき、税率ごとに税額計算を行うこととなります。
なお、区分経理を行うことが困難な中小事業者(基準期間(法人:前々事業年度、個人:前々年)における課税売上高が5,000万円以下の事業者をいいます。)には、一定期間、売上税額や仕入税額の計算の特例が設けられています。

 

区分記載請求書等保存方式(令和元年10月1日~令和5年9月30日)

軽減税率制度の実施に伴い、消費税等の税率が軽減税率(8%)と標準税率(10%)の複数税率になりますので、事業者は、消費税等の申告等を行うために、取引等を税率ごとに区分して記載するなどの経理(以下「区分経理」といいます。)を行う必要があります。

1 消費税軽減税率制度の概要

(1)消費税の軽減税率制度の実施(令和元年10月1日~)

消費税及び地方消費税(以下「消費税等」といいます。)の税率は、令和元年10月1日に、8%(うち地方消費税率は1.7%)から10%(うち地方消費税率は2.2%)に引き上げられました。

(2)令和元年10月1日からの消費税等の税率

適用時期

 区分

令和元年9月30日
まで
令和元年10月1日から
(軽減税率制度実施後)
軽減税率 標準税率
消費税率 6.3% 6.24% 7.8%
地方消費税率 1.7%

消費税額の17/63

1.76%

消費税額の22/78

2.2%

消費税額の22/78

合 計 8.0% 8.0% 10.0%

 

 

 

国内において行う「特定資産の譲渡等」には、その提供を行う者と提供を受ける者の納税義務が逆転するリバースチャージ方式が適用されます。

「特定の資産の譲渡等」とは、「事業者向け電気通信利用役務の提供」及び「特定役務の提供」をいいます。

 

(1)提供する国外事業者が免税事業者である場合

役務の提供を行う国外事業者が免税事業者であっても、提供を受ける国内事業者が一般課税を適用し、かつ、課税売上割合が95%未満であれば、リバースチャージ方式による申告納税の義務が生じます(消基通5-8-1)。

(2)課税標準額と仕入税額

「特定資産の譲渡等」については、対価を支払う国内事業者が申告納税を行うことになるので、消費税等を上乗せせず、本体価格を支払対価として取引を行うことになります(消基通11-4-6)。
したがって、特定課税仕入れに係る消費税の課税標準は、特定課税仕入れに係る「支払対価の額」であり、100/108を乗じる税額計算は行いません(消法28②、消基通10-2-1)。
また、特定課税仕入れに係る消費税額は、その支払対価の額に6.3/100(6.3/108ではありません)を乗じた金額になります(消法30①)。

(3)課税売上高の計算

課税売上割合は、その事業者の資産の譲渡等及び課税資産の譲渡等の対価の額により計算します。その事業者の資産の譲渡等ではない特定課税仕入れに係る対価の額は、国内事業者の課税売上割合の計算に含まれません(消法30⑥)。

(4)仕入税額控除の適用要件

特定課税仕入れについては、控除対象仕入税額が課税標準額に対する消費税額を上回ることはありませんから、請求書等の保存は必要ありません。次の事項が記載された帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用を受けることができます(消法30⑦、⑧二)。

イ)特定課税仕入れの相手方の氏名又は名称
ロ)特定課税仕入れを行った年月日
ハ)特定課税仕入れの内容
ニ)特定課税仕入れに係る支払対価の額
ホ)特定課税仕入れに係るものである旨

1.仮想通貨に係る課税関係の見直し

資金決済に関する法律に規定する仮想通貨の譲渡が非課税とされ、支払手段の譲渡に準じて、課税売上割合の計算に含めないこととされました。

この改正は、平成29年7月1日以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等及び課税仕入れについて適用されます。

 

2.到着時免税店制度の創設

入国旅客が到着時免税店において購入して購入する外国貨物について、携帯品免税制度の対象として内国消費税を免除することとされました。

事業者が、国内において行った課税仕入れのうち、国外事業者からうけた「消費者向け電気通信利用役務の提供」に係るものについては、当分の間、仕入税額控除の適用は認められません。

但し、「登録国外事業者」から受けた「消費者向け電気通信利用役務の提供」については、仕入税額控除の適用が認められます。

※登録外事業者に付された登録番号の帳簿等への記載が要件となります。

免税事業者を除く事業者が,簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に高額特定資産の課税仕入れを行った場合、当該高額特定資産の仕入等の日の属する課税期間から当該課税期間の初日以降3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間において,事業者免税点制度及び簡易課税制度は適用されないこととなりました。

 

下記の場合事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用はなし

H28.10        H29.3期   H30.3期   H31.3期

高額特定資産の購入   ×        ×      ×

※1 高額特定資産とは、棚卸資産及び調整対象固定資産のうち、一取引単位における支払対価の額が税抜き1,000万円以上のものとなります。

Ⅰ.はじめに
 消費税法上、雇用と請負の区分(仕入税額控除の対象となる対価の区分)は、非常に難しい問題ですが、基本的な考え方としては、外注先等に支払ったものが、請負の役務提供の対価としての性格を有すれば、課税仕入に係る支払対価として、消費税法上、仕入税額控除の対象になります。
 一方、雇用契約に基づくものとされれば、給与等を対価とする役務提供を受けたものとして、課税仕入とはなりません。今回は、雇用関係に基づく役務提供か、それとも請負契約に基づく役務提供かの区分に関する判断のポイントを見る事にします。

Ⅱ.雇用か請負かのポイント
 雇用か請負かの判断のポイントについて、消費税法基本通達では、以下のように取り扱う旨を明示しています。業務とは、自己の計算において独立して事業を行なう者をいうから、個人が雇用契約又は、これに準ずる契約に基づき、他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行なわれる事業に役務を提供する場合は、事業に該当しないのであるから留意する。従って、出来高払いの給与を対価とする役務の提供は事業に該当せず、また、請負による報酬を対価とする役務の提供は事業に該当するが、支払を受けた役務の提供の対価が、出来高払いの給与であるか請負による報酬であるかの区分については、雇用契約又は、これに準ずる契約に基づく対価であるかどうかによるのであるから留意する。
 この場合において、その区分を明らかに出来ない時は、例えば、次の事項を統合勘案して判定するものとする。
1. その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容けれるかどうか
2. 役務の提供に当り、事業者の指揮監督を受けれるかどうか
3. まだ、引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなす事ができるかどうか
4. 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか

以上の内容を整理すると以下のようになります。

   ・契約内容は他人の代替が可能なものでない
   ・仕事の遂行に当り、個々の作業について指揮監督を受ける
   ・引渡し未了の物件等が、不可抗力によって滅失した場合であっても、
    その者が権利として報酬等の請求ができる
   ・役務の提供に係る材料、又は用具等を提供又は供与されている
 ような場合には、”雇用契約に基づく労務の対価”とされます。
 一方、
   ・契約内容は他人の代替が可能なものである
   ・仕事の遂行に当り、個々の作業について指揮監督を受けない
   ・引渡し未了の物件等が、不可抗力によって滅失した場合であっても、
    その者が権利として報酬等の請求ができない
   ・役務の提供に係る材料、又は用具等を自前で調達する
 ような場合には、 “請負契約に基づく労務の対価”とされます。

 上図の判定事項は、一つの目安であって、これらを総合勘案して実態に即した判定が出来るよう注意して下さい。

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