令和3年度税制改正 電子帳簿等保存制度の見直し

1 電子帳簿等保存制度に係る手続きの簡素化

電子帳簿等保存とは
 文書保存の負担軽減を図る観点から各税法で保存が義務付けられている帳簿書類は、一定の要件の下で、プリントアウトせずに、作成した電子データのまま保存することができます。

改正の内容

①事前承認の廃止
 税務署長の事前承認制度が廃止されます。

②保存要件の緩和
 保存要件については従来の「システム関係書類等を備え付けること」、「電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、記録事項を画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できること」に加えて、「国税職員の質問検査権に基づくその国税関係帳簿書類に係るデータのダウンロードの求めがある場合にはこれに応じること」を満たすことで電子データの保存を可能とするよう要件が緩和されます。

③インセンティブによる差別化
 従来の保存要件を満たして電子データを保存し、その旨を届け出た者(優良電子帳簿保存)については、所得税、法人税または消費税に係る修正申告や更生があった場合には、過小申告加算税が5%軽減されます。

④青色申告特別控除の取扱い
 見直しに伴い、所得税の青色申告特別控除の控除額65万円の適用要件については、優良電子帳簿保存の場合にのみ適用され、一般電子帳簿保存の場合には適用されません。

適用期日
 令和4年1月1日から施行され、上記1①②は同日以後に備付けを開始する国税関係帳簿又は保存を行う国税関係書類について、③は同日以後に法定申告期限が到来する国税について適用されます。

2 スキャナ保存制度の要件緩和及び不正行為に係る担保措置の創設

スキャナ保存とは
 文書保存の負担軽減を図る観点から、各税法で保存が義務付けられている書類について一定の要件の下で、紙のままではなくスキャナで読み取った電子データの形式で保存することができます。

 対象となる書類
 ・取引相手から受け取った書類
 ・自己が作成して取引相手に交付する書類の写し
  (例)契約書、見積書、注文書、納品書、請求書、領収書 など

改正の内容

①事前承認の廃止
 税務署長の事前承認制度が廃止され、事務負担が軽減されます。

②保存要件の緩和
・タイムスタンプ要件の緩和

 国税関係書類の受領者等がその書類に署名し読み取った上、タイムスタンプを3日以内に付与する必要がありましたが、自署が不要となり、タイムスタンプの付与期間が2か月以内へと延長されます。
 また、保存データについて訂正又は削除を行った事実及び内容を確認することができるシステムにおいて、そのデータを保存することでタイムスタンプ付与に代えることができます。

・適正事務処理要件の廃止
 相互けん制や定期的な検査及び再発防止策の社内規定整備等の適正事務処理要件については、廃止されるため、紙原本による確認が不要となります。このため、スキャン後は直ちに原本の廃棄をすることができるようになります。

・検索要件の緩和
検索項目が取引等の年月日、取引金額及び取引先に限定されるとともに、保存義務者が国税職員による調査の際に保存データのダウンロードに応じる場合に、範囲指定および項目を組み合わせて設定できる機能を確保しておく必要がなくなります。

③不正行為に係る担保措置
 要件を緩和する一方で、不正行為抑止のため、電子データに関連して改ざん等の不正が把握された場合には、重加算税を10%加重する措置が講じられます。

適用期日
 令和4年1月1日から施行され、上記2①②は同日以後に備付を開始する国税関係帳簿又は保存を行う国税関係書類について、③は同日以後に法定申告期限が到来する国税について適用されます。

3 電子取引に係るデータ保存制度の要件の見直し

電子取引とは
 取引情報(取引に関して受領し、または交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいいます)の授受を電磁的方法により行う取引をいいます。

改正の内容

①保存要件の緩和
・タイムスタンプ要件

 スキャナ保存制度と同様に付与期間が2か月以内へと延長されます。

・検索要件の緩和
 上記2②の検索要件の緩和と同様の措置がとられるほか、保存義務者が判定期間中の売上高1,000万円以下の事業者の場合には、全ての検索要件が不要となります。

判定期間とは、
 個人事業者の場合は、電子取引が行われた日の属する年の前々年の1月1日から12月31日までの期間、法人の場合は、電子取引が行われた日の属する事業年度の前々事業年度をいいます。

②不正行為に係る担保措置
 上記2③と同様の措置がとられます。

③書面出力による保存の廃止
 電子取引の取引情報に係る電磁的記録を出力することにより作成した書面等の保存をもってその電磁的記録の保存に代えることができる措置については、廃止されます。

適用期日
 令和4年1月1日から施行され、同日以後に行う電子取引の取引情報について適用されます。

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