借地権の認定課税とその相続財産としての評価

1.借地権とは
一般に借地権とは、借地借家法に定める「建物の所有を目的とする地上権又は賃借権」をいい
ますが、税法では、借地借家法に規定する借地権より範囲が広く解され、税目によっても若干
範囲が違っています。

2.借地権の設定とは
借地権の設定とは、土地の所有者等が他の者に対してその土地の使用収益することを許諾する
ことをいい、一般には、土地の賃貸借契約の締結によってその設定が行われます。この借地権
が設定されますと、借地権者はその土地の使用収益権を得、土地所有者は、地代の収受権を取
得することとなります。権利金は、その土地の使用収益権に対する対価といえます。 

3.権利金を収受しないと
権利金を授受する取引きの慣行がある地域において、同族関係にある個人及び法人間の取引に
対してその授受がなされないときは、税務上では、これらの行為があったものとみなして課税
(認定課税)されます。

4.借地権の取引慣行があるかないか
権利金を授受する取引きの慣行があるかどうかは、その場所の借地権割合で判断します。
その割合が30%未満であれば、借地権の慣行がないものとみなされます。

5.借地権割合とは
借地権割合とは、一般に路線価図に記載された割合のことを指します。
路線価は、相続税の課税価格に算入する財産評価をする場合によるものとされています。
それ以外の目的の場合、例えば、借地権を設定する場合の借地権の価額を算定する場合や借地権
を譲渡するような場合においては、他の合理的な方法によっても差し支えないとされています。

6.借地権の認定課税がない場合
上記3の場合において、権利金の収受があったものとみなして認定課税が行われますが、
権利金の授受に代えて相当の地代を収受している場合、あるいは、
当事者間で将来土地を無償返還する旨を定め、これを連名の書面(土地の無償返還の届出)で
税務当局 に届けているときは、権利金の認定課税がされないこととされています。
但し、無償返還の届出をしている場合において、相当の地代と実際の地代との差額があるとき
は、その差額について地代の認定課税が行われます。

7.借地権の認定課税がある場合
借地権の認定課税は、地主が会社か個人か、借地人が会社か個人かによって次のように取り扱わ
れます。
     地主が    借地人が会社の場合    借地人が個人(地主会社の役員、使用人)
                         の場合
     会 社  地 主:認定課税(寄附金)あり    地 主:認定課税(給与)あり
     の場合  借地人:認定課税(受贈益)あり    借地人:認定課税(給与)あり

     個 人  地 主:認定課税なし        地 主:認定課税なし
     の場合  借地人:認定課税(受贈益)あり    借地人:認定課税(贈与)あり

8.認定課税される権利金の額(法人税)
会社が借地権を設定した際に、通常の権利金の授受がない場合には、認定課税が行われますが、
この場合に行われる認定課税の金額は、次の算式で計算した金額となります。
ただし、この算式により計算した金額が、通常収受すべき権利金の額を超える場合は、その通常
収受すべき額となります。この場合の通常収受すべき権利金の額とは、たとえば更地価額に借地
権割合を乗じた額などをいいます。

  認定課税される金額=土地の更地価額 ×(1-実際の地代の年額/相当の地代の年額)

  相当の地代=土地の更地価額 × おおむね年6%

※1権利金を一部授受している場合や経済的利益の額がある場合は、その額を控除した金額に対し
  て課税されます。
※2相当の地代は、権利金や経済的利益がある場合であっても、ないものとして計算します。

 (例)
 ・土地の更地価額(時価)      2,000万円
 ・その土地の相続税評価額     1,400万円
 ・借地権割合             60%
 ・通常支払うべき権利金       1,200万円(時価)
 ・実際に支払っている地代年額      60万円
 ・相当の地代の年額          120万円

 ①実際に支払っている地代に見合う権利金の額
 土地の更地価額   実際に支払っている地代年額  相当の地代の年額
   2,000万円 ×(1-       60万円 /     120万円  ) =1,000万円    
 ②通常支払うべき権利金の額
   1,200万円<1,000万円 ∴1,000万円
 ③認定課税される権利金の額
               1,000万円

9.無償返還の届出書が提出されている場合の相続税法上の評価
上記6の借地権の設定に際し、土地の無償返還に関する届出書が提出されていた場合その個人に
相続が発生した場合の借地権や土地の相続税評価は次のようになります。
(1)借地権の評価(借地人側の評価)
借り手に相続が発生した場合、無償返還を表明しているので借地権はゼロと評価されます。
但し、個人が貸し手、同人と同族関係のある法人が借り手の土地の賃貸借取引が行われた場合で、
当該法人の株式の評価において純資産価額方式の計算を行うときは、その土地の自用地評価額の
20%相当額の価値があるものとして資産の価額に算入します。
(2)貸宅地(いわゆる底地としての土地)の評価(地主側の評価)
貸し手に相続が発生した場合、貸宅地(土地)は自用地評価額の80%で評価します。

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