相続により土地を取得する場合において、その評価額は国税庁が発表する路線価に基づいて
評価します(倍率評価方式の地域を除く)が、この方式により土地を評価する場合には、その
路線価に土地の地積を乗じて計算しますが、
① 土地の形がよくない不整形地
② 擁壁などのがけ地
③ 路線価に接している部分が狭い間口狭小の土地
④ 路線価に接している間口部分に対して著しく奥行きが長い奥行き長大な土地
⑤ 新たに建物を建てる際等に敷地の一部を道路として提供する土地(セットバック)
⑥ その土地が周囲の土地の地積に対して著しく大きくかつ、開発行為を行うとした場合に
公共公益的施設用地の負担が必要と認められる土地(広大地)
これらのように場所や状況応じて様々な減額があり、これらの評価方法は財産評価基本通達
に基づいて行われます。
土地の評価をする際には、このような財産評価基本通達に基づく減額のほかにも様々な減額
があり複雑です。そのため、これらの減額を考慮せずに土地の評価額を計算し、相続税を多く
払ってしまう場合も少なくありません。しかし、相続税を多く払ってしまった方でも相続開始
の日から5年10か月以内であれば、払いすぎた分の相続税を請求できる手続きがあります。
国税庁の統計によると、このような手続きによって平成24年には相続税が400億円を超
えて還付されており、その原因のほとんどが土地の評価額の減額によるものとみられています。
過去にはこの手続きにより相続税が、1000万円を超えて還付された事例も多くあり、その
大きな要因は土地の評価方法です。この結果から相続税の申告で最も重要な項目が土地の評価
であり、土地の評価額によって相続税が大きく変動することがわかります。
税務相談への回答などを公表する国税庁のタックスアンサーによると、
① 墓地などに隣接する土地
② 道路との高低差が著しい土地
③ 地盤に甚だしい凹凸がある土地
④ 地盤が震動する土地
⑤ 周囲に騒音がある土地
⑥ 日光が当たりにくい土地
⑦ 周囲の臭いがひどい土地
これらの土地は利用価値が著しく低下しているとして、土地の評価額を10%減額すること
もできます。しかしながら、国税庁はこのような土地の減額に対して明確な基準を示しておら
ず、相続に精通する税理士でも意見が分かれ、過去の申告実績などから判断するしかないため、
判断が非常に難しいところです。そのため、相続税の申告書の作成を依頼する税理士によって、
納付する相続税額が異なることがあります。
また、自宅の庭に稲荷や不動尊、祠などがあればそうした設備は相続税が非課税となること
はもちろんのこと、その設備の敷地も相続税は非課税とするべきであると東京地裁が判決を出
したのを受けて、国税庁は平成25年7月に、課税の取り扱いを変更しました。
平成20年の国税不服審判所の裁決では、埋蔵文化財のある土地は文化財保護法で義務付け
られる発掘調査費の80%を減額できた例もあります。
相続税申告における土地の評価は、財産評価基本通達に従って行うことが基本でありますが、
国税庁が公表するタックスアンサーや、裁判所の判決事例、納税者の正当な権利を守る機関で
ある国税不服審判所の裁決なども土地を評価する重要な情報となります。土地の評価は相続税
の申告において最も重要な項目であるにも関わらず統一された基準がないため、相続税の申告
を依頼する税理士の知識や申告等の実績などが相続税額を大きく左右することにもなります。