相続税の税務調査があるとき

 <相続税の申告書を検証するための資料収集>
 税務署では、相続税の申告書が提出されると相続税の申告書に記載された内容が正しいもの
かどうかの検証を行います。
 不動産については、市区町村役場からの固定資産税評価額通知により申告洩れがないかどう
かのチェックをします。
 又、相続財産の申告洩れとして最も多く指摘されるのが預貯金をはじめとした金融資産です
が、税務署は、銀行や証券会社などの金融機関へ照会を行います。残高証明書だけでなく、預
貯金であれば口座の入出金の明細も入手しています。
 残高証明書や入出金明細の取得は、被相続人名義の口座だけでなく家族名義の口座も入手し
ているため、親の預金口座から子供の預金口座へ現金を動かしたことがすぐにわかります。
 これは、祖父母の預金口座から孫の預金口座へ現金を動かすことも同様です。
 この他、預金口座から引き出した現金をそのままタンス預金をしていてもわかります。
なぜなら、預金口座から「引き出した」という証拠が残っています。多額の現金を引き出した
のであれば、その使途は必ず調べられるのは明らかであり、もしその使途が不明であればタン
ス預金をしていると疑われることになります。
 また、近年では海外に現金を送金する人が増えてきています。日本から海外へ送金をしたと
きや海外から日本へ送金された金額が100万円を超えるときは、銀行から税務署へ国外送金
の調書が提出されることになっています。
 又、平成25年より5千万円を超える国外財産を有する方は、国外財産調書を提出すること
になりました。

 <税務署にて相続税の税務調査が必要かどうかの判定>
 税務署で集められた各種資料を基に、KSKシステムへデータが蓄積されていきます。
 この集約されたデータにより、提出された相続税の申告書が適正であるかどうかの判断がな
されます。
 上記預金残高における被相続人、相続人の持ち金のそれぞれの申告所得とのバランス、
 生前3年間における被相続人から相続人等への贈与等とみられる預金の移動がある場合には、
さらに他の銀行等金融機関への調査範囲を広げてゆく予備調査へと進みます。
 このように更に詳しく資料収集を行ったことで、実地調査を行うまでもないと判定されるこ
とや申告洩れが少ないため事後的に対応すべき事案に判定されることもあります。
 実地調査が必要である事案と判断されると、相続人の自宅に赴き税務調査が行われます。

 <税務調査が行われる時期>
 相続税の税務調査が行われるのは、通常、相続税の申告期限から1~2年後くらいです。
 今頃ですと、平成24年中相続開始くらいですか!
 相続税の税務調査が行われるのは相続税の申告件数の23~24%程度、そのうち申告洩れ
などが指摘されるのは80%を超えています。
 これらの数値から読み取れることは、確実な予備調査がなされいるということで、実地調査
は最後に修正申告を勧奨するための確認のためであるということです。
 相続人の自宅に赴く税務調査は、9月から11月にかけて行われることが多くなります。

 <税務調査の内容>
1.調査を受ける場合の注意事項
 被相続人が亡くなってから、又、相続税の申告を済ませてからでも相当期間が経過している
ので覚えていないことも多く、調査官の誘導により本心と違うことを喋ってしまうこともあり
ます。相続人等が応対するのですが、高齢となられている場合もあり、緊張しすぎて体調を壊
してしまうこともあるので注意が必要です。
 1)標準で、2名の調査官が1日5時間ほどで2日間に渡り調査
 2)昼食は不要です
 3)感情的にならず、質問されたこと以外は話さないようにしてください
  (ぼろを出さないように)

2.税務調査に来る理由
 1)基本的に税務調査に来る場合は、税務署は申告洩れ分を把握して来ます。
 2)申告洩れ分を把握していなくても、被相続人の生前の収入・所得状況に比べ申告財産額
   が少ない場合、さらなる隠し財産の手がかり及び理由を把握しに来ます。

3.税務調査官が見るポイント
 ・ 調査官の人は何気ない話の中から鋭く観察しています。
 ・ 話の一言一言にも注意をしお話をしたほうがよいです。
 ・ 見る聞くの内容は次のようになります。
 1) ヒアリング調査
  亡くなった人(被相続人)について
  ① 被相続人の死亡原因
  ② 入院期間・入院先
  ③ 医療費の額及びその支払方法
  ④ 出生地・実家・趣味
  ⑤ 過去の勤務先および退職時の役職
  ⑥ 持ち家がある場合、その建築時期・建築資金
  ⑦ 過去の他の相続よりの財産の取得関係
  ⑧ 贈与関係確認 父母・息子等へ
  ⑨ 生前の旅行等
  奥さんについて
  ① 過去より現在の勤務状況・年収
  ② 過去の他の相続よりの財産の取得関係
  ③ 贈与関係の確認(答え方により諸刃の剣・時効との関係)
  ④ 実家の内容(持参金)
  ⑤ 生活費の確認
  ⑥ 保険料の支払い確認(郵便局現金払い等)
  ⑦ 貸金庫の有無・場所
  子について
  ① 過去より現在の勤務状況・年収
  ② 同居・別居
  ③ 学生であれば学費の額
  ④ 贈与関係の確認
 2) 見るポイント
  ① 収入及び生活費を把握し申告額との整合性確認
  ② 家族名義の預金が、その妻・子の収入(持参金・祖父母からの贈与)で蓄えられたも
    のかどうかの確認
  ③ 家族名義の預金が、贈与という意志で相手方に異動したものかどうかをさりげなくヒ
    アリングの中で確認している
  (贈与とは、双務契約で贈与者が「あげるよ!」、受贈者は「もらうよ!」という意思が
   あってはじめて、贈与契約成立です。)
  <調査官は、「過去に被相続人より贈与を受けた事実がありますか!」と、「贈与税の脱
   税をしたことはないですか!」と、暗に相続人より「その事実はない!」との言質をと
   るような言い方をしてきます。注意が必要です。>
 3) 貸金庫
   金地金・割引債等の銀行・証券会社等の反面調査で把握できないものの発見
 4) 預金通帳
   過去3年ほどの出入り分を、家族名義の分を含め把握
 5) 室内の視査
  ① カレンダー・タオル・年賀状等により申告されていない取引銀行・証券会社の財産の
    手がかりを探す
  ② 賞状・トロフィー等からゴルフ会員権の有無把握
 6) 金庫・押入・タンスの引出 申告洩れの有価証券等の手がかりを探す
 7) 香典帳
  ① 申告されていない取引銀行・証券会社の財産の手がかりを探す
  ② 過去の勤務先から常識額以上の香典をもらった場合、退職金扱い
 (注意点)貸金庫・室内・金庫・押入・タンスの引出等は、調査当日までに変に疑いをかけ
   られるものは整理しておいて下さい。

4.調査の終了
 1) 調査の期間
   調査の期間は特に定められていません。複雑で調査困難な場合又は折り合いのつかない
  ときには一カ月以上に及ぶこともざらにあります。
  (最近の調査は長引く傾向にあります。二カ月を超えてしまうこともあります。)
 2) 調査の終了
   調査を展開してほぼ、目途がついた場合には、顧問税理士及び相続人代表に対して調査
  結果と疑問点を提示します。
   指摘した疑問点に対する相続人等の回答をもとにして更に調査を行う場合もあります。
  調査官のタイプによっては、調査中から疑問点を顧問税理士に対して解明依頼をしておき
  スムーズな調査終了への布石をします。逆に、調査官からの指摘を放置しておきますと、
  調査日数が延びることにもなります。
   お互いに早期終結を目指すならば、協力姿勢が必要です。
 3) 修正申告
   調査結果の提示を受けて申告洩れ財産があった場合には、修正申告の対応をします。
  修正申告書の提出は、相続人全員の了解と押印が必要です。相続財産の一部の申告漏れの
  場合でも、その税額は相続人全員に跳ね返って影響します。
 4) 加算税・延滞税
   加算税・延滞税については必ずかかります。修正申告を提出するときに本税とその加算
  税を調査官からしっかりと聞いておく必要があります。

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FAX:075(841)6431
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